歯ぎしり・くいしばり
teeth-grinding歯ぎしり・くいしばりは実は、歯を失う大きな原因です
「虫歯でもないのに歯が割れた」「しっかり磨いているのに虫歯ができる」
——その原因が、歯ぎしりやくいしばりかもしれません。
音が出なくても、自覚がなくても、気づかないうちに歯と顎にダメージが積み重なっています。
まず、どんな状態のことを言うのでしょう?
「歯ぎしり」も「くいしばり」も、どちらも寝ている間や、気づかないうちに起きていることが多く、自分ではなかなか気づけません。
大きく分けると次のふたつです。
グラインディング歯ぎしり
上下の歯を左右・前後にこすり合わせる動きです。
「ギリギリ」「ガリガリ」という音が出ることがあり、同居のご家族に指摘されて初めて気づく方も少なくありません。
主に睡眠中に起こります。歯の表面が徐々に削れていき、歯が短くなったり、つめ物が取れやすくなったりします。
音が出るため気づかれやすい反面、本人は全く自覚がないことがほとんどです。
クレンチングくいしばり
上下の歯をぐっと強く噛みしめた状態が続くことです。
歯を動かさないため音が出ず、隣で寝ている人にも気づかれません。日中、集中しているときや緊張しているときにも無意識に起こります。
音がない分、長年気づかれないまま歯や顎に大きなダメージが蓄積しやすいのが特徴です。
静かなぶん見過ごされがち。自覚しにくい「サイレントダメージ」です。
どちらも総称して「ブラキシズム」と呼ばれます。
実際にはこのふたつが混在していることも多く、「歯ぎしりはしていないから大丈夫」と思っていても、くいしばりが強く出ているケースはよく見られます。
虫歯・歯周病・破折、すべてに関わっています
日本人が歯を失う原因の1位は歯周病、2位は虫歯、3位は歯の破折です。
実はこの3つすべてに、歯ぎしり・くいしばりが深く関係しています。
歯ぎしりは歯周病を悪化させ、虫歯の多くは歯のひび割れから細菌が侵入して起こります。
そして破折は、くいしばりが直接の引き金になることがあります。
「磨き方が悪いのかな」と思っていた虫歯も、歯や歯ぐきへの力の問題が根本にあることは少なくありません。
こんな症状、思い当たりませんか?
- 朝起きると顎がだるい、重い感じがある
- しっかり磨いているのに、歯と歯の間に虫歯ができやすい
- 歯の根元(歯ぐき際)のエナメル質が欠けていたり、歯ぐきが下がっている
- 頬の内側や舌の縁に、歯の跡(白い線やでこぼこ)がついている
- 気がつくと、日中も上下の歯を触れさせていることがある
- 詰め物や被せ物が取れやすい、歯が割れたことがある
- エラが張っている、または咬筋(頬のあたり)を押すと痛い
これらは歯ぎしり・くいしばりのサインである可能性があります。
受診前に知っておくと安心できること
「歯ぎしりかも」と思ったとき、はじめて歯科に相談するのは少しハードルを感じるかもしれません。
受診の流れと、事前に準備しておくと役立つことをまとめました。
01 「歯ぎしり・くいしばりが気になる」と伝えてください
受付や問診票に「歯ぎしりが気になる」「朝起きると顎がだるい」など、気になっていることをそのまま書いていただければ大丈夫です。特別な準備は不要です。虫歯や歯周病の治療と同じ感覚でお越しください。
02 口の中と顎・筋肉の状態を確認します
歯の摩耗やひび割れ・詰め物の状態、歯ぐきの下がり具合、頬の内側や舌の圧痕、咬筋(頬のあたり)の張り・圧痛などを診ます。レントゲンで骨の状態を確認することもあります。痛みを伴う検査はありません。
03 必要に応じてマウスピースをお作りします
状態を確認した上で、ナイトガード(就寝時に装着するマウスピース)が必要と判断した場合はお型を取ります。保険適用のものもあります。型取り自体は数分で終わり、完成まで約1〜2週間ほどいただきます。
04 装着の確認と、日中の習慣についてお伝えします
マウスピースが完成したら実際に装着してかみ合わせを確認します。あわせて、日中の「くいしばり(TCH)」を自分で意識して減らすためのポイントをお伝えします。
難しいことはなく、日常の中で少し意識するだけでできることです。
05 定期的に状態を確認しながら継続します
歯ぎしり・くいしばりは一度で完全になくなるものではなく、うまく付き合いながら歯へのダメージを最小限にしていくことが大切です。
定期健診のタイミングでマウスピースの状態や歯の摩耗具合を確認し、必要に応じて調整します。
受診前に準備しておくと役立つこと
「いつ頃から気になっているか」「家族に歯ぎしりを指摘されたことがあるか」「朝の顎の状態」など、ざっくりと思い出しておくと診察がスムーズです。
お薬を服用している場合はお薬手帳もご持参ください。
睡眠中の力は「体重と同じくらい」になることも
眠っている間、私たちは自分でコントロールできません。起きているときのかみしめ力は体重程度ですが、睡眠中は脳のリミッターが外れ、奥歯にかかる力が体重と同等、あるいはそれ以上になることがあるとも言われています。
毎晩その力が歯にかかり続けている——そう考えると、歯が壊れていく理由が見えてきます。
よくあるご質問
患者さんからよくいただく疑問をまとめました。タップして回答をご覧いただけます。
Q1.歯ぎしりはしていないと思うのですが、くいしばりだけでも歯に影響がありますか?
A. はい、くいしばりだけでも十分に歯や顎へのダメージは起こります。むしろ「音が出ない分、気づかれないまま長年続いてしまう」という点で、くいしばりは注意が必要です。
日中に集中しているとき、スマホを見ているとき、家事をしているときなど、無意識に上下の歯を接触させている「TCH(歯列接触癖)」が習慣になると、積み重なった力が歯・歯ぐき・顎関節に影響を与えていきます。
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Q2.しっかり歯磨きしているのに虫歯ができます。歯ぎしりと関係がありますか?
A. 関係している可能性があります。現代の虫歯の多くは、磨き残しよりも「歯のひび割れや力による修復物の剥がれ」から細菌が侵入して発生するケースが増えています。
特に歯と歯の間(コンタクト部分)は、本来プラーク(歯垢)がほとんど溜まらない場所です。それにもかかわらずそこに虫歯ができているケースでは、処置をしてみると歯のひび割れが確認されることが少なくありません。「磨いているのになぜ?」とお悩みの方は、力の問題が絡んでいる可能性を考えてみてください。
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Q3.マウスピース(ナイトガード)をつけると、歯ぎしりは治りますか?
A. マウスピースは歯ぎしり・くいしばりそのものを「治す」というより、歯や顎へのダメージを最小限に抑えるための装置です。装着することで上下の歯が直接当たらなくなり、詰め物・被せ物の破損や歯の摩耗を防ぐ効果があります。
また、噛み合わせのポイントをずらし、顎の筋肉が過度に力を発揮しにくい状態を作ることで、睡眠中の顎や関節への負担を和らげる効果も期待できます。当院ではこの観点から、ハードタイプを主に使用しています。保険が適用されるものもありますので、お気軽にご相談ください。
Q4.子どもも歯ぎしりをしているようです。放っておいて大丈夫ですか?
A. 子どもの歯ぎしりは成長の過程で起こることも多く、乳歯から永久歯に生え変わるにつれて自然に落ち着くケースが多いとされています。ただし、音が大きい・歯の摩耗が目立つ・朝に顎の痛みを訴えるといった場合は、一度ご相談いただくことをお勧めします。
成人と同様に、顎や歯への負担が続く状態は、長期的には歯の健康に影響することがあります。定期健診の際に一緒に確認するのがよいでしょう。
Q5.エラが張っているのは歯ぎしりと関係していますか?
A. 関係している可能性があります。エラの張りは「咬筋(こうきん)」という噛むための筋肉が発達している状態です。強いくいしばりや歯ぎしりを長期間続けていると、この筋肉が肥大し、顔の輪郭に影響することがあります。
また、下顎の骨の角(下顎角)が張り出したり、上顎や下顎の骨に硬いふくらみ(骨隆起)ができることも、長期にわたって強い力がかかり続けたサインと考えられています。エラのあたりを押すと痛みや張りを感じる方は、くいしばりが影響している可能性があります。
予防先進国スウェーデンが教えてくれること
虫歯・歯周病の予防が進んだスウェーデンでは、80歳で平均25本の歯が残っています(日本は約15本)。
しかし残念ながら、それでもわずかな欠損は起きています。その原因の60%以上が「破折」——つまり力によるものでした。
細菌による虫歯・歯周病をコントロールした先に残る、最後のリスクが「自分の筋力」です。
生涯自分の歯で食べるために、力のコントロールが鍵になります。
院長が書いた「歯ぎしり・くいしばり」の解説全文を読む 院長が書いた「歯ぎしり・くいしばり」の解説全文を読む 力と歯の関係、治療の考え方まで、院長が自ら書き下ろした文章です。
気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。
まずはお口の状態を一緒に確認しましょう。

